お茶を出された後の返事
文化庁の『中国からの帰国者のための生活日本語』には、教師が児童の家を訪ねる教材会話があります。保護者がお茶を出すと、教師は礼を述べて「あまりお気遣いなく」と答えます。印刷263頁の会話で、次の頁の解説には「おかまいなく」も紹介されています。
この箇所には、教師がお茶を飲んだとも、茶碗を返したとも書かれていません。はっきり断ったと結論付けると、示された会話より先へ進んでしまいます。必ず飲むという返事と読むのも同じです。確認できるのは、もてなしを受けて相手の手間に応じる場面です。
勧める言葉の条件を残す
今度は訪問の終わりに置いた創作例です。主人はお茶を追加できますが、客が電車に向かう時刻になったのかは知りません。
よろしかったら、もう一杯いかがですか。
東京外国語大学の条件表現の教材は、「たら」が条件と後に続く事柄を結ぶ使い方を説明しています。この例でも、よろしければという条件を消さずに読むところから始められます。客が時間や好みに応じて答える余地があります。
客が鞄を持っていても、その動作一つで主人の誘いを嘘と決めることはできません。帰りかけた人にもう一杯勧めることも、予定が詰まっていて断ることも、この設定では考えられます。まだ必要なのは、客に残っている時間の情報です。
断られた後も主人が勝手にお茶を注ぐなら、丁寧な条件を付けたというだけでは行動まで配慮になりません。勧め方と、相手の選択を実際に受け入れるかは、分けて見たいところです。
返事を読んだ後に何をするか
客が次のように返したとします。これもこの記事で作った例です。
ありがとうございます。もう出ますので、どうぞお気遣いなく。
ここには、もう出るという予定が加わっています。先ほどの教材会話より、次の行動が具体的です。客は帰る予定で、主人が新しくお茶を用意する理由も減ります。「お気遣いなく」の裏の意味を探す前に、その直前に示された事情を読めます。
公開アーカイブのお茶の場面で、主人は、時間があればと条件を付けてもう一杯勧めます。再訪の場面では、再訪を促す挨拶の後、客が来月も来てよいか尋ねます。一方は今もう少し居る条件、もう一方は先の訪問の条件を確かめる会話です。丁寧に話すという共通点より、どの日程がまだ決まっていないかを比べてみてください。
相手が言っていない本音を探るために誘いを重ねるより、準備に必要なことを短く聞けます。お茶を追加するのか、今出るのか。その場の次の行動を確かめれば足りる場合もあります。
参考資料
- 中国からの帰国者のための生活日本語 — 文化庁 · 確認日:
- 条件 — 東京外国語大学 · 確認日:
この記事の変更履歴
- — 教材の確認範囲と創作例を分け、三言語の意味を照合しました。